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大阪高等裁判所 昭和56年(ネ)2178号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

三地代を減額すべき事情

<証拠>によれば、本件土地に対する固定資産税及び都市計画税の額は、昭和五四年度と昭和五五年度の間に差はないこと、右乙一号及び原審鑑定人高力善三郎の鑑定結果(以下高力鑑定という)によれば、本件土地の地価は昭和五四年六月から昭和五五年六月までの間に約一〇パーセントの上昇があつたこと、右証拠及び控訴人代表者本人尋問の結果によれば、右の間に本件土地近隣の住民の数は増加し、被控訴人が本件土地上に所有している小売市場のためには有利な事情が生じたことが、各認められ、また、右各事実と右乙一号証及び高力鑑定の結果によれば、本件土地近隣の土地の地代も右の間に上昇していることが認められ、右の間に地代の減額を相当とすべき事情の変更があつたことは本件全証拠によつても認めることができない。

高力鑑定の結果は昭和五四年六月一日及び昭和五五年六月一日時点における本件土地の相当地代を算定(前者につき年額一三六七万八〇〇〇円、後者につき年額一四七五万九〇〇〇円)しているが、これは前記二認定の地代値上げ合意が存しないことを前提としているばかりでなく、たとえ同鑑定のとおり昭和五五年六月一日時点における年額一九三二万円の地代額が不相当であつたとしても、その不相当が昭和五四年六月一日以降の事情変更により生じたとの証拠がないこと前認定のとおりであるから、これをもつて地代減額事由があるとすることはできない。

右のとおり、前回の地代改定合意以降に地代の減額を相当とすべき事情の変更が存しない以上、被控訴人の地代減額請求は地代を減額する効力を生じないものとするほかはない。

被控訴人は本件土地の地代として年額一九三二万円は高すぎると主張する。しかし、右主張は前説示したところから採用できない。すなわち、右額が近隣の地代に比して高額であるとしても、それは被控訴人が自らこれに合意した結果によるものであつて、被控訴人がこれに拘束されるのは止むをえないところである。地代減額請求又は増額請求は、当事者が合意により定めた地代がその後の経済事情の変更により不相当となつた場合に限り、その事情の変更を考慮して契約関係を修正することを目的とするものであつて、当事者が自ら定めた地代の額が世間相場との間に差があつても、その差異が事情の変更によるものとの要件を充足しない以上、直ちに裁判所がこれを修正すべきものではなく、その点の決定は当事者の責任と自治に任ねられるべきものである。借地法一二条一項が「比隣ノ土地ノ地代ニ比較シテ不相当ナルニ至リタルトキ」と規定しているのも右の趣旨に出たものと解することができる。

(上田次郎 広岡保 井関正裕)

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